受け取った退職金を貯金しておく「だけ」では、老後の生活が不安です。資産の寿命があなたの寿命よりも先に尽

退職金運用で資産寿命を延ばす!おすすめの運用方法とポイントを紹介<後編>

2023年11月17日
受け取った退職金を貯金しておく「だけ」では、老後の生活が不安です。資産の寿命があなたの寿命よりも先に尽きてしまうかもしれません。その理由は前編でお伝えしました。
後編では退職金の適切な運用方法と、運用のポイントをお伝えします。正しい知識を持ってきちんと計画を立てれば資産運用も怖くありません。
「運用って損するんじゃないの?」と思っている人も、ぜひお読みください。

退職金運用方法の選択肢

  • 退職金運用方法の選択肢
退職金を運用する効果をあらためて確認しておきましょう。
下の図は65歳で受け取った2,000万円の退職金を、運用しない・年率2%で運用・年率3%で運用した場合のシミュレーションです。
  • 不安な老後資金どうする?退職金運用のポイント|お役立ち情報|三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
出典:不安な老後資金どうする?退職金運用のポイント|お役立ち情報|三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社

3%で運用できれば、運用しないケースにくらべて資産寿命を7年延ばせます。
資産寿命を延ばすために、よくある退職金運用の選択肢7つを、おすすめ度合いも含めてFP目線で解説していきます。
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  • 1. 預貯金
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  • 2. 個人向け国債
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  • 3. 株式
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  • 4. 投資信託
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  • 5. 外国債券
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  • 6. 生命保険
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  • 7. 不動産投資

1. 預貯金:おすすめ度◯

前編で紹介した「ふやすお金」以外のお金は、預貯金で運用しましょう。ご存知のとおり預貯金は利息がほとんどつかず、お金はふえません。しかし預貯金の最大のメリットは元本保証である点です。
「ふやす」目的ではおすすめできませんが、日々の生活費など「使うことが決まっているお金」を置いておくなら預貯金一択です。将来使う時期や金額が決まっているお金は定期預金に分けるなどして工夫しましょう。

2. 個人向け国債:おすすめ度✕

個人向け国債は国(日本)がわたしたち個人向けに発行している債券です。個人向け国債の特徴は大きく2つ、満期まで持てば元本保証である点と、最低金利が保証されている点です。
2023年10月時点で、3年満期・5年満期・10年満期と3種類が販売されており、どれも半年に1度利息を受け取りながら満期になると元本が戻ってくるしくみです。
また10年満期の個人向け国債は金融情勢に応じて半年ごとに利率が見直されますが、最低でも0.05%が保証されています。
なお2023年10月時点で、10年満期の利率は0.51%です。1,000万円買っても年に5万円しか利息を受け取れないため、運用方法としてはおすすめできません。

3. 株式:おすすめ度✕

株式投資で資産をふやすなら、配当金と値上がり益の2つを狙っていきます。
会社の業績がよければ年に1〜2回配当金を受け取れる可能性があり、たとえばソフトバンクは2023年10月時点で配当金の利回りが5.15%と予想されています。
「5%も配当金がもらえるなら…」と思うかもしれませんが、配当金は必ず支払われるとは限らず、配当金以上に株価そのものの動きが大きい点がネックです。
買ったときよりも高い株価で売却すれば大きな利益を得られますが、相場の理解や経験が求められます。
退職金の運用にはリスクが高すぎるため、おすすめはできません。

4. 投資信託:おすすめ度◎

投資信託は、投資家から集めたお金を運用会社が代わりに運用してくれる商品です。
日本の株や海外の株、債券や不動産などいろいろな資産に分けて投資してくれる「パッケージ商品」ともいえます。
なかでもおすすめは下図のように世界の株式で運用する投資信託をNISA(つみたてNISA)で購入する方法です。
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
出典:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

運用のポイントのパートで後述しますが、世界中の株式に「資産を分散」でき、またつみたてNISAなら「長期投資」と「時間の分散」との相性が良いためです。
2024年から制度が変わるつみたてNISAは、毎月最高30万円ずつ投資信託を積立購入できる口座です。投資信託を売却して利益が出ると通常は約20%の税金がかかりますが、NISAであれば税金もかかりません。
退職金を運用するならNISAと投資信託の活用をまずは検討しましょう。

5. 外国債券:おすすめ度◯

外国債券は海外の国や企業が発行する債券を指します。特徴は大きく2つあり、金利が高い点と為替の影響を受ける点です。
たとえば代表的な外国債券である米国債(10年)は2023年10月25日時点で4.83%の利回りです。
  • 米国債取引 | 債券 | マネックス証券
出典:米国債取引 | 債券 | マネックス証券

ここに為替の影響がくわわります。外国債券は満期まで持てば発行された通貨で元本が還ってきます。つまり米国債を1万ドル買うと、満期には1万ドルが戻ってきます。しかし為替はつねに変動しているため、購入時よりも円安に進んでいれば利益を享受でき、円高ならそのぶんは損失を被ります。
  • 外国債券の主なリスク−はじめての債券投資 | JTG証券
出典:外国債券の主なリスク−はじめての債券投資 | JTG証券

為替の損失を利息でカバーできる可能性がありますが、購入前に利息と為替変動の損益分岐点を考えておくとよいでしょう
外国債券はまとまった資金があり、利率が高い場合には退職金運用としておすすめできる運用手段です。

6. 生命保険:おすすめ度◯

退職金の運用手段として生命保険を勧められるケースも多くあります。
退職金を運用するなら、外貨建て(ドル建て)の生命保険で、金利がよい場合に限りおすすめです。
ドル建ての生命保険は保険料の払込みや保険金・解約返戻金の受け取りをドルでおこないます。したがって日本円に換算するときには為替レートの影響を受け、とくに保険料が一時払いのドル建て債券では外国債券に近い運用方法となります。
  • 外貨建て保険、注意点はこれだ!!|エッセイ一覧|公益財団法人 生命保険文化センター
出典:外貨建て保険、注意点はこれだ!!|エッセイ一覧|公益財団法人 生命保険文化センター

また生命保険である以上「保障」がつき、保障にかかるコストのぶん利率が割り引かれています。すでにじゅうぶん保障を確保している方は別の運用方法を検討してもよいでしょう。

7. 不動産投資:おすすめ度△

不動産投資は家賃収入など不労所得が入り、魅力的に感じるかもしれません。しかしよほどの資金力がない限り、退職金の運用方法としてはおすすめできません
物件の購入など初期費用が高いほか、メンテナンスの費用もかかり、空室リスクもあります。
すでに物件を所有している人や資金に余裕がある人であれば取り組んでみるのもひとつかもしれませんが、新しく物件を取得するところから始めるなら負担が大きすぎるといえます。

退職金運用のポイント

  • 退職金運用のポイント
退職金の運用方法として◎がついたのは投資信託のみでした。退職金を運用するポイントは「長期投資」と「分散投資」の大きく2つであり、投資信託であれば両方とも比較的容易に満たしやすいためです。
ここでは2つのポイントを具体的に説明していきます。

長期投資

リタイア後の資産運用は、老後の生活を長く支えていく目的で取り組みます。短期的な値動きを気にするのではなく、長い目でゆるやかに資産をふやす運用を目指しましょう。
長期投資をすれば必ず損をしないとは限りませんが、短期間での投資よりもリスクは低くなります。
  • 長期投資のススメ | みずほ証券
出典:長期投資のススメ | みずほ証券

株でも投資信託でも、短期間の上昇と下落を繰り返しながら、長い目で見ると上昇(下落)の方向に進むケースがほとんどだからです。
短期運用だと値下がりしたときに怖くなって手放してしまい、損するケースも少なくありません。
  • リスクを軽減して運用するには「長期・積立・分散投資」がポイント|はじめてのiDeCo編|iDeCoでできる資産運用ガイド|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
出典:リスクを軽減して運用するには「長期・積立・分散投資」がポイント|はじめてのiDeCo編|iDeCoでできる資産運用ガイド|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

できるだけ値動きのゆるやかな商品に投資し、値下がりしたときにも長い目で回復を待てるような長期運用がひとつめのポイントです。

分散投資

分散投資には資産の分散と、時間の分散の2種類あります。
どちらもリスクを抑えられるため、長期投資と同様に必ず意識しましょう。
資産の分散
国や地域を分けて投資するほか、株と債券など性格の異なる投資対象に資産を分散させるのも投資の基本です。ひとつが値下がりしても、ほかは下がっていない状態が期待でき、損失を軽減できるためです。
  • つみたてNISA早わかりガイドブック : 金融庁
出典:つみたてNISA早わかりガイドブック : 金融庁

ですから、たとえばトヨタの株とホンダの株を買ったとしても分散投資とはいえません。どちらも同じ自動車メーカーで株価の動き方が似ているためです。
ひとつの商品に異なる国・地域の株や債券が組み入れられている投資信託なら資産の分散も容易です。

時間の分散
時間の分散は商品を買う時期を複数回にずらすこと。つみたてNISAをはじめとする積立投資が時間分散の良い手法です。
1回でまとめて投資してしまうと「値上がりすると思って買ったのに、実は買ったときが高値だった…」ということにもなりかねません。
何度も何度もタイミングを分けて投資するのもリスクを抑えるポイントです。

資産と地域を分散して、積立投資を5年続けた場合と20年続けた場合の運用実績が下の図です。
  • つみたてNISA早わかりガイドブック : 金融庁
出典:つみたてNISA早わかりガイドブック : 金融庁

5年の運用では元本割れするケースもみられますが、20年間積み立てつづけた場合はマイナスになるリスクが軽減されています。
長期投資と分散投資は投資の鉄則です。

「資産を維持する」ための運用方針を考えよう

この記事のまとめに代えて、退職金の運用方法とおすすめ度を表にまとめました。
  • 表
老後の資産運用は「資産寿命を延ばす」運用方針での取り組みが大切です。
「どれだけふやすか?」よりも「運用しながら取り崩し、どれだけ資産を維持できるか」を考えましょう。
まずは「老後はどんなふうに暮らしたいのか?」「そのためにはいつどのぐらい資金が必要になるか?」を洗い出します。
それから今後入ってくる予定の資金と使う予定の資金を書き出して、資産配分と運用の計画を立てていきます。
万が一、老後の生活が長引いた場合や、病気や介護などで支出が増えた場合にも安心して暮らすためには計画が非常に重要です。

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