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50代での早期退職、FPが実例から準備のポイントをお伝えします

2026年4月24日
執筆者:土屋 ごう
  • 50代での早期退職、FPが実例から準備のポイントをお伝えします
早期退職を検討する際、「条件はよさそうだが、仕事を辞めてこの本当に大丈夫だろうか」といった不安は、決断を迷わせる最大の要素でしょう。実際に当所にも、40代後半から50代の方がこうしたご相談にいらっしゃいます。
早期退職で後悔しないためには、制度の条件・ご自身が思い描く第2の人生・今後のお金の見通しをもれなく考慮したうえでの判断が欠かせません。

そこで本記事では、私が相談の現場でお会いした方の実例を紹介するとともに、早期退職に向けた準備、見落としやすい注意点、退職金の運用方法まで解説します。

50代の早期退職とは?

  • 50代の早期退職とは?
「早期退職」といっても、意外とその定義はあいまいです。まず本記事での「早期退職」が何を指すのか定義したうえで、実際にどのような方が検討するものなのか、相談の現場で多い3パターンをさっそく紹介していきます。

この記事でいう「早期退職」とは

本記事では、「 早期退職制度」や「早期退職優遇制度」を利用して、定年を待たずに退職することを早期退職の定義とします。
これらの制度では会社が定年前の退職者を募集し、通常より有利な条件で退職できるケースが一般的です。有利な条件とは、退職金の上乗せや再就職支援などが代表例です。厚生労働省の調査で勤続20年以上・45歳以上の大学卒の退職金額をみると、定年退職で平均1,896万円に対して、早期優遇だと2,266万円で約2割高くなっています。(※)

ただし、この後くわしく解説していきますが、これらの優遇条件はあくまで判断材料のひとつにすぎません。早期退職はその後の人生を左右する大きな選択ですので、ご自身の気持ちや退職後のビジョンなども条件と同等に重視しましょう。

※参考:令和5年就労条件総合調査概況|厚生労働省

相談現場でみる、早期退職を選ぶ3つのパターン

50代で早期退職を選ぶ理由は人によってさまざまですが、相談数を重ねるうちに、置かれている状況や考え方の共通点がみえてきました。ここでは私の経験にもとづいて、実際に多い3つのパターンを紹介します。

パターン1:出費のピークを越えつつあり、資産形成が進んでいる人

まず、 金銭的な余裕が生まれたために早期退職を検討するパターンです。
具体的には、子どもの教育費のピークが過ぎた方・メドが立った方が該当します。住宅ローンも完済までの見通しが立ったうえで預貯金や運用資産も積み上がってきたために「定年まで働き続けなくてもいいのでは」と考えはじめます。

なお、資産額としては、教育費のピーク後で1億円程度がおおよその目安です。とはいえ退職後の暮らしや収入の状況などは人によって異なります。なかには1億円あっても心もとないケースも十分考えられますので、万人に当てはまる基準ではない点には留意しましょう。

パターン2:やりたいことの実現のため退職する必要がある人

次に、 やりたいことを実現するために退職を選ぶパターンです。
このパターンの方は、趣味や人生経験を通じて芽生えた明確な夢や目標を持っています。会社員として働きながらも可能な範囲で努力はしてきたが、やはり環境や時間的な制約から、この先に進むとなると仕事を辞めざるを得ないといった方が多い傾向です。
具体例として、手話通訳を目指すために早期退職を選んだ方がいらっしゃいます。手話通訳者になるためには専門の学校に通って資格を取得する必要があります。会社員のままでは日中の通学が不可能であり、ご自身の夢に向けて早期退職に踏み切りました。

このように、夢や目標を実現するためにどうしても通学や移住が必要となり、人生の残りの時間なども熟慮したうえで早期退職を選ぶ方も一定数みられます。

パターン3:制度条件がよく、退職の合理性が高い人

最後に、退職金の上乗せ額が大きいなど 早期退職の条件がよく、辞める選択を現実的に考えやすいパターンです。実際には、早期退職の対象年齢が比較的高く、60歳で退職しても65歳まで5年分の収入がほぼ入ってくるような条件の事例をみてきました。
このような好条件であれば、会社に残った場合と早期退職した場合の退職金、その後の働き方・暮らしなどを比較して退職がリアルな選択肢になり得ます。

このパターンで早期退職する方は、制度の条件と退職後の家計・暮らしを冷静に見極め、合理性を重視した判断が多いといえます。

50代で早期退職するメリット・デメリット

  • 50代で早期退職するメリット・デメリット
50代での早期退職には、資金面や時間の使い方にメリットがある一方、収入減や心理的な負担がデメリットとしてあげられます。それぞれ整理してみましょう。

50代で早期退職するメリット

50代で早期退職するメリットは資産の運用面とライフプランの面の大きくふたつあり、どちらも「時間」が関係しています。

メリット1:退職金をより早くから運用できる

早期退職すると定年を待たずに退職金を受け取れるため、老後に向けた資産形成をより効率的に進められる可能性があります。なぜなら、資産運用は早く始めればそのぶん時間が味方についてくれるからです。
もちろん退職後のライフプランや働き方、住宅ローンの残債などにもよりますが、前章 パターン3のように早期退職の条件がよい場合は戦略的な運用を進めやすいでしょう。

メリット2:体力があるうちに第2の人生を始められる

人生の後半といっても、昨今の50代はまだまだ体力や気力が残っている方も多くいらっしゃいます。85歳で人生の幕を閉じるとしてもまだ25年以上の時間が残っており、夢や目標の実現を諦めるには早いといえる年代です。
むしろ、これまで懸命に働いてある程度の資産を築いてきたからこそ、学び直しや趣味、働き方の見直しなどの自己実現に踏み出せるタイミングといえるかもしれません。

人生を豊かにするため、50代の今だからこそできることに時間を使える点も、早期退職の大きな価値です。

50代で早期退職するデメリット

一方、おもなデメリットもふたつあります。収入の減少と、退職後の環境変化による心理的な負担です。後者は意外と見落とされがちですので、早期退職を検討している方は頭の片隅に入れておきましょう。

デメリット1:毎月の収入が減る

当然ですが、仕事を辞めれば毎月の安定した給与収入がなくなります。再就職するにしても現役時代と同じ年収を維持できるとは限りません

それだけでなく、早く退職するぶん厚生年金の加入期間が短くなるため、将来の年金額も下がります。早期退職を検討する際、将来受け取れる年金額を確認する方は多いでしょう。「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できる見込み額は定年まで働く想定で算出されています。この見込み額を信じてしまうと「想定より年金が少ない」という悲惨なズレが起こります。

早期退職の条件がどれだけよくても、将来の家計をできるだけ誤差の小さい形で見通し、マネープランへと落とし込みましょう。

デメリット2:環境の変化が心理的な負担になりうる

早期退職だけでなく定年退職にも当てはまりますが、人によっては、退職後の環境の変化が心理的に大きな負担となりかねません。

たとえば金銭面で、シミュレーション上は問題がなくても、残高が減っていく現実を目の当たりにして強い不安を感じる方がいらっしゃいます。
あるいは会社を離れて生活リズムや他者とのつながりが激変し、喪失感や孤独感からメンタルの不調に陥る方もみられます。毎日足を運んでいた職場や肩書きがなくなり、自分の居場所や役割を失ったように感じやすいためです。

心理的な問題に関しては、前章 パターン2のように、明確にやりたいことがあって早期退職を選ぶ方は比較的心配なさそうだといえます。そうでない場合は「自分は大丈夫」と思い込まず、退職後の趣味や仕事など見当をつけておくようにしましょう。

50代での早期退職に向けた準備

  • 50代での早期退職に向けた準備
50代での早期退職を成功させるためには、制度の条件と退職後の暮らし方・働き方、家計の見通しの3点から総合的な判断が求められます。ここでは、早期退職を考えはじめたら取り組みたい準備について、順を追ってみていきましょう。

手順1:退職後の生き方を考える

早期退職では退職金がいくら上乗せされるのか、どうしても条件に気を取られがちです。しかしその前に「 退職したらどんな生活を送りたいか」を考えてみてください。
それから、その生活を送るために「いくらあれば辞められるか」を考えていく流れをとりましょう。

退職後の人生は十人十色です。仕事を完全に辞める方もいらっしゃいますし、好きなことをしながら緩めに働く方もいらっしゃいます。あるいは手話通訳者を目指した方のように、学校に通って必要な資格をとってからその道で再度仕事に就く方もみられます。
第2の人生に正解も間違いもありません。ただし、完全にリタイアする方はそのぶん厚い蓄えが必要になります。一方、趣味を充実させながら多少は働いてもよいと考えられるのであれば、家計の助けとなり、金銭的な不安も感じにくくなるでしょう。

ですから、まずは退職後の生活を整理するところから始めましょう。以下のような観点で想像してみてください。
 ● 旅行や趣味
 ● 新しい仕事や学び
 ● 生活の拠点
 ● 1日/1週間のスケジュール

仕事や働き方に関してはもう1歩踏み込んで考えてみましょう。
 ● 完全に仕事を辞めたい
 ● 好きなことをしながら少し働きたい/働いてもよい
 ● 働くなら月にいくらぐらい収入を得たいか
 ● そのために1日何時間、週に何日くらい働くのか
 ● 何歳まで働くのか

希望が曖昧なままだと、この次に取り組むお金の計算も定まりません。早期退職は「お金ありき」ではなく「生き方ありき」のスタンスが大切です。

手順2:「左右バランスシート」で家計を可視化する

手順1は右脳を働かせてイメージする作業でした。今度は反対に数字を使う作業です。私のおすすめは家計を左右に分けて整理していく方法です。具体的にどんなものなのかくわしく解説しますので、ノートやExcelを広げて実際に取り組んでみてくださいね。

左側:現在の資産・今後の収入

左側は 資産の欄です。以下を参考に、現在の資産今後の収入を書き出してみましょう。
 ● 現在の預貯金・金融資産
 ● 退職金
 ● 企業年金があればその金額
 ● 公的年金
 ● 退職後も働くならその収入
とくに、 年金は必ず確認しておきましょう。
先ほども述べたとおり、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できる年金の見込み額は、定年まで現在と同程度の年収で働き続ける前提で算出されています。しかし早期退職をすれば厚生年金の加入期間が短くなるため、将来の年金額は見込み額より少なくなるでしょう。
ここでは「今辞めたら年金はいくらになるのか」を知りたいので、「ねんきんネット」の「詳細な条件で試算」を使ってあらためて試算してみてください。再就職を考えている方は、退職後の働き方や収入も入力してくださいね。

なお「ねんきんネット」にはマイナポータルまたはID・パスワードを使ったログインが必要です。はじめて利用する方は先に連携・登録を済ませましょう。

ねんきんネット ログイン

右側:これからの全支出

今度は右側に、 平均余命までにかかる全支出をできるだけもれなく書き出していきます。参考までに、50歳・55歳・60歳の平均余命を記載しておきます。
男性 女性
50歳 32.57年 38.24年
55歳 28.01年 33.54年
60歳 23.63年 28.92年
参考:1 主な年齢の平均余命|厚生労働省

ご覧のとおり、50代でもこの先25〜35年ほど生活が続く可能性があるため、支出の見積もりは非常に重要です。少し大変かもしれませんが、以下の費目を平均余命まで見積もってみてください。

 ● 毎月の生活費
 ● 住宅ローンの残債
 ● 教育費(お子さんがまだ学生の場合)
 ● 自宅のリフォーム費用
 ● 車の買い替え費用
 ● 趣味や旅行など、退職後にしたいことに必要な費用
 ● 子や孫のための費用
 ● 予備費

50代では、お子さんがまだ学生といったご家庭も少なくないでしょう。お子さんの結婚やお孫さんの誕生などは不確実ですが、イベント費としてある程度見込んでおくと安心です。結果的に使わなかったとしたらほかのことに回せますので、ゼロで考えるよりは有効です。

早期退職を検討する際、生活費以外の出費を見落として「何とかなる」と判断してしまう方がいらっしゃいます。ところが実際には自宅のリフォームや車の買い替えなど大きな一時支出もどこかのタイミングで迎えるもので、ここまで含めてはじめて現実的な計算が可能になります。

手順3:左右を比べて不足額が出るなら対策を考える

左側と右側を書き出したら、最後に両者を比べてみましょう。右側の支出のほうが大きければ、その差額が不足分です。早期退職するなら、少なくともその不足分を何らかの形で準備する必要があります。
働かない前提で考えていた方は、退職後も少し働く選択も浮上しませんか。
あまりに不足が大きい場合は早期退職を急がず、退職の時期を含めたライフプランをもう一度整理したいところです。

第1章で「資産額は1億円が目安」と軽くお話ししました。実際に書き出してみると、おおむねそのとおりになった方も、差があった方もいらっしゃると思います。これが、目安があくまで目安でしかない理由です。 あなたにとっての必要額を算出してはじめて、最適な判断をおこなえることをお分かりいただけたでしょうか。

早期退職を考える人が見落としやすい注意点

  • 早期退職を考える人が見落としやすい注意点
これまでみてきたように、50代の早期退職は、退職金の額にくわえてその後の働き方や年金収入、支出までふまえて判断していきます。ところが実際には、リスクの見落としや先入観によって判断を誤りそうになるケースも少なくありません。
そこで本章では、あらかじめ意識しておきたいポイントを3つに絞って紹介します。

注意点1:退職後は働かない前提で考えている

とくに1章のパターン1やパターン3のように、資産の積み上がりや制度条件のよさを踏まえて早期退職を検討している方は「退職=仕事を完全に辞めること」という先入観に囚われていませんか。
もし退職後も少し働く選択肢を持てれば、金銭的な問題を一気に解決できるケースも少なくありません。さらに仕事が社会との接点や生活リズムの維持につながり、心理的負担の軽減も期待できます。

「退職=仕事を完全に辞めること」と決めつけず、「どの程度なら働いてもよいか」まで思考を広げられると、早期退職がより実現に近づくでしょう。

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