親の終活!親が元気なうちに聞いておくことは?FPが実例から解説

2026年7月17日
執筆者:土屋 ごう
親の終活!親が元気なうちに聞いておくことは?FPが実例から解説
親が元気なうちに介護やお墓、相続などについて話しておかねば…とは思っても、何から聞けばよいのか迷いますよね。デリケートな話題のため親の機嫌を損ねてしまう可能性もあります。

当所にお越しになった相談者のSさんも同じ悩みを抱えていました。
Sさんは数年前、帰省中にたまたま母親が手を骨折したことを機に、親の終活について考えるようになったそうです。救急車を呼んだ際に保険証がどこにしまってあるのかが分からず、突然のできごとに対応できない危機感を味わったためです。

親は介護や入院などについてきちんと考えているのだろうか。お墓や実家はどうするつもりなのか。「争族」となるのは避けたい…。
ところがそうした話をいざ切り出そうとしても、何から聞けばよいのか分かりません。

そこで今回は、Sさんからの相談をもとに、親の終活について自然に話を切り出す方法や、親に聞いておくことを中心に解説していきます。
お盆や年末年始など家族が集まるタイミングは1歩踏み出すチャンスです。
本記事が親の終活に悩むあなたの助けになれば嬉しく思います。

【Sさんプロフィール】
Sさん:30代後半/女性
両親ともに70歳前後で健在
(母の手のケガは完治し、現在は後遺症もなく日常生活に支障なし)
妹と2人姉妹
実家は持ち家で、妹が実家近くに暮らしている
Sさんからみて父は預貯金や生命保険などきちんと考えていそうな様子だが、その内容についてはSさんも妹もほとんど知らない
母についてはどこまで考えてくれているのか不安

終活は親の「もしも」への備えづくり

終活は親の「もしも」への備えづくり
終活というと、葬儀やお墓、相続など親が亡くなったあとへの備えだと思われがちです。しかし実際には、 急な病気やケガ、認知症、入院、介護が始まったときに本人と家族が落ち着いて対応するための備えでもあります。

Sさんも、母親が骨折して救急車を呼んだ際に健康保険証(当時)がどこにあるのか分からず困りました。保険証はここ、通帳はあの引き出し…と、親自身は身の回りのものをきちんと管理できているとしても、それらの保管場所を本人しか知らなければ急な事態に家族が対応できません。
認知症などで判断力が低下してからでは、介護や医療について本人の希望を聞いたり、お金や契約の管理方法を一緒に考えたりしづらくなります。

だからこそ親が元気なうちに、急な事態にも落ち着いて対応できるように備えておく必要があります。
親がケガをした、認知症かもしれないとなれば、ただでさえ気持ちが動転するでしょう。そのとき、必要な情報の所在や本人の希望を家族で共有してあれば、家族の精神的・実務的な負担が軽減されます

親の終活で最低限聞いておきたい3つのこと

親の終活で最低限聞いておきたい3つのこと
「終活」と調べると、親に確認すべきことがたくさん出てきますよね。
葬儀やお墓のこと、相続のこと、資産や遺品のこと…すべて把握できれば理想です。しかし尋ねるほうも尋ねられるほうも大きな負担でしょう。

終活の第1歩として最低限押さえておきたい情報は、介護に使えるお金、重要書類の保管場所、実家の引き継ぎ方の3つです。
それぞれ解説していきます。

1位:介護が必要になったときに使えるお金

Sさんからみて父親はお金をわりとしっかり管理しているように映りますが、両親にどのくらいの資産があるのか聞いたことがありません。もしものときのために十分な備えがあるのか、Sさんは心配していました。

親の終活で最初に確認したい内容は資産についてです。資産といっても相続のためではなく「 介護が必要になったときや施設へ入居するときに、年金と預貯金で費用を賄えそうか」を確認します。
介護は相続よりも前にやってくるものです。相続する財産がなくても残された家族は困りませんが、親自身の生活費や介護費用が不足すれば親子ともに困りますよね。

できれば、毎月の年金受取額預貯金の額を確認したいところです。不動産は現金化に時間がかかりますので、必要なときにすぐ使えるお金を把握しましょう。
なお年金の受取額は親の生年月日や職歴を手がかりに、厚生労働省の公的年金シミュレーターで大まかな金額を試算できます。
私のこれまでの経験から、年金は月に20万円程度あればそれなりに生活がまわっていくケースが多いとみられます。

親に具体的な金額を尋ねにくい場合はまず「介護について何か考えてる?」と2、3歩手前から尋ね、詰問にならないように気をつけましょう。本人もまだあれこれ考えている最中かもしれません。1回で聞き出せなくてもかまいませんので、少しずつ前進していきましょう。

2位:マイナンバーカードなど重要書類の保管場所

Sさんは、母親が骨折したときに健康保険証(当時)のしまってある場所が分からず苦労しました。
あなたは、ご両親がマイナンバーカードやおくすり手帳、診察券などをどこにしまっているのかご存じでしょうか。
こうした重要書類やID・パスワードの保管場所が分からないと、急な受診や亡くなった際などの手続きが大変です。

保管場所を確認しておきたい代表的なものは以下のとおりです。
チェックマイナンバーカード
チェックおくすり手帳
チェック診察券
チェック通帳・キャッシュカード
チェック保険証券
チェックネットバンクやネット証券のID・パスワード
親が亡くなってから複数の銀行口座が次々とみつかり、家族が手続きに苦労する例が実は少なくありません。残高までは把握しなくても問題ありませんので、まずは 利用している金融機関が分かるようにしておいてもらいましょう。

またネットバンクやネット証券を利用している場合は、IDやパスワードをどのように管理しているのか確認しておきます。たとえばスマートフォンのパスワード管理機能やパスワード管理アプリ、手帳などが考えられます。
IDやパスワードそのものを共有してもらう必要はありません。IDやパスワードの確認方法が分かればOKです。

そして、何がどこにしまってあるのかがひと目で分かるようにノートや一覧表にまとめておいてもらい、そのノートや一覧表自体の保管場所も家族で共有しましょう。

3位:実家の引き継ぎ方

Sさんはまた、実家の引き継ぎについても心配していました。
実家については近くに住んでいる妹が相続する可能性が高いだろうと考えており、Sさん自身も異論はありません。ただ、仲のよい妹と「争族」になって関係が崩れることは避けたいと考えています。

兄弟姉妹がいらっしゃる場合、お金なら簡単に分けられますが実家(不動産)はそうもいきません。
争族になりやすい家庭の特徴をご存じですか?
資産が多い家庭ではなく、話し合ってこなかった家庭です。
実家や財産をどのように分けるつもりなのか、この段階では詳細まで確認する必要はありませんが、実家をどうするつもりなのかは聞いておくとよいでしょう。

預貯金を相続する場合は、相続したお金のなかから相続税を払えばよいので問題が起こりにくい一方、不動産を相続すると納税資金を要します
相続財産に預貯金が十分にあれば納税資金まで確保しやすくなりますが、資産のうち不動産の割合が高い場合は引き継ぐ側も準備が必要になるかもしれません。

兄弟姉妹があるご家庭は実家について親がどう考えているのか確認しておくと、相続・納税の準備を進めやすくなります。

親の終活についての自然な切り出し方3つ

親の終活についての自然な切り出し方3つ
本来、終活については親がみずから話してくれる形が理想です。ただ、実際にはなかなか話題にあがらない家庭も少なくありません。
この場合は子どもからの働きかけが求められますが、介護や病気、死につながる話題のため、Sさんのように切り出し方に悩んでいる方も多いでしょう。
ポイントは親の準備不足を指摘するのではなく、「いざというときにわたしたちが困らないために教えてほしい」といった姿勢です。
ここでは親への切り出し方を3つ紹介しますので、先ほどの姿勢を意識してチャレンジしてみてください。

テレビや知人の話から切り出す

まずは テレビや知人など、第三者の話題をきっかけにする方法です。
「同僚が親の介護で仕送りをしているんだって」「テレビで介護の特集を見たんだけどね」といった形で切り出してみましょう。実際に聞いた話でなく架空の話でもかまいませんので、ごく一般的な事例を持ち出してみてください。

そして「お母さん・お父さんはどう思う?」と尋ねてみましょう。
抽象的な尋ね方ですが、詰問や詮索している印象を和らげられるため親も答えやすくなります。
もし「心配しなくてもうちは大丈夫」と帰ってきたら、もう一歩踏み込んで「何か具体的に考えてるの?」と聞いてみましょう。
答える負担の小さい質問から入り、少しずつ核心へつなげていくイメージです。
ただし、焦るあまり無理な深掘りは禁物です。親の様子や雰囲気をみながら適当なところで切り上げる意識も持ちましょう。

親の暮らしぶりや健康の話から切り出す

親と話す以外にも、見て分かる情報があります。たとえば食事の様子歩き方耳が聞こえにくそうにしていないか、服用している薬やサプリメントが増えていないか部屋の整理状況などです。
帰省の際には親の体調や生活に変化がないか意識して見てみましょう。

もし気になった点があれば「この薬、前から飲んでたっけ?」「何か不便していることはない?」「今も習いごとは続けてるの?」などの形で会話を始めます。

そこから、無理のない範囲で介護の話やおくすり手帳の場所などに展開していけるとよいですね。
この方法だと金銭的な話や相続の話には至りにくいかもしれませんが、今抱えている心配ごとや必要な情報を日常会話の延長線上で少しずつ把握していけます。

片方の親の入院・介護などをきっかけに切り出す

両親ともに健在の場合、どちらかが入院したときや介護が必要になったとき、また亡くなったときは現実的な話として切り出しやすいタイミングです。
誰もが入院や介護を経て亡くなるわけではなく、急逝するケースもあり得ます。
両親が元気なうちに話せれば理想ですが、 どんなに遅くともどちらかが亡くなったタイミングだけは逃さないようにしましょう。

親に何かが起きたときは、治療費や施設費などお金のこと、またもう片方の親の生活について話し合う重要な機会です。両親のどちらか一方が家計や預貯金をまとめて管理している場合には、管理を任せている側の親は保険証券や重要書類の所在を把握していない可能性があります。
「次に何かあったときに困らないように教えてほしいんだけど」と前置きして、将来の介護のことや書類の所在など実務的に必要な情報を確認しましょう。

情報の多さより家族間での共有がカギ

情報の多さより家族間での共有がカギ
終活の目的は、親に何かあったときに家族が困らない状態をつくることです。
親自身が介護やお墓、相続についてくわしく決めていて、子どもにもきちんと共有してくれているならそれに越したことはありません。
しかし、この記事を読んでいるあなたのご両親はまだそこまでの準備が進められていないだろうと思います。
子どもの立場からすれば、そろそろ聞いておくべきではないのか、せめてエンディングノートぐらいは書いてもらったほうがよいのでは…と心配ですよね。

そこで本章では、終活で親に聞いておきたいことや切り出し方以外にもSさんにお伝えした3つの内容をお伝えします。

介護やお墓などの希望は細かく決まっていなくてもよい

本記事の前半でお伝えしたとおり、介護についてはお金の面で問題がないかどうかは確認しておいたほうがよいでしょう。
ただ、どんな状態になったら施設へ入るのか、どんな施設へ入るのかといった詳細までは決まっていなくても問題ありません。希望を聞いて意味がないとはいいませんが、実現できるかどうかは別問題だからです。
たとえば親は自宅での介護を希望しているとしても、子どもの仕事や生活によっては実現できないかもしれません。
介護についてはその時の状況に応じた柔軟な判断も大切ですので、事前にそこまで細かく決めておく必要はないと私個人的には考えます。

お墓についても同様です。親の希望が決まっていなければ、無理に結論を求めなくてもよいでしょう。近年は墓じまいを選ぶ家庭も増えています。もしも親が決めきれないなら、将来子どもが状況に合わせて判断してかまわないと思います。

エンディングノートは必ず書かなければいけないものではない

終活といえばエンディングノートが定着してきましたね。
エンディングノートは介護状態や認知症になったときのこと、お金のこと、葬儀のことなどを1冊にまとめられる、とても便利なツールです。親が書いてくれるなら非常に助かります。

ただし、エンディングノートは必ずしも書かなければいけないものではありません
必要なときに必要な情報がすぐ分かる状態になっていれば、ふつうの大学ノートやいつも使っている手帳などを使ってもOKです。

エンディングノートを使用する場合でも、すべての項目を埋められなくても問題ありません。実物をみると分かりますが、エンディングノートには多くの記載項目が設けられています。すべて埋めようとすると気が重くなり、かえって記入が進まないかもしれません。
まずは 最低限家族と共有したいことを記入し、ほかは書きやすいところを埋めていってもらうとよいでしょう。

また、エンディングノートにしても別のツールを使うにしても、 作成した場合はそのノートやメモの保管場所を共有しておいてもらいましょう。緊急で使うことになるかもしれませんので、比較的分かりやすい場所での保管をおすすめします

親から聞いた情報を兄弟姉妹で共有する

兄弟姉妹がいる方は、親から聞いた情報を子どもどうしで共有しましょう。
家族全員が揃う場で終活の話題になるとは限りません。親と2人でテレビを観ているときなど、何気ない日常のひとコマでふとそうした話をする機会が訪れるかもしれません。

親の介護が始まったとき、入院することになったとき、亡くなったときなど有事の際に「わたしはそんな話聞いてない!」などと揉めないように、兄弟姉妹間での情報共有も忘れないようにしましょう。

親の終活に関するよくある質問

親の終活に関するよくある質問
ここまではSさんからの相談をもとに親の終活について解説してきました。
本章ではSさんに限らず親の終活に関して当所によく寄せられる質問を3つ紹介しておきます。

Q1. 親の終活では何を聞けばよいですか?

質問 親の終活では何を聞けばよいですか?
回答 まずは、親が介護状態になったときに使えるお金があるかどうかを聞きましょう。
終活というと相続(遺産)を思い浮かべがちですが、介護は相続の前にやってきます。遺産はなくても困りませんが、介護費用は準備がないと困ります。
次に、通帳やキャッシュカード、マイナンバーカード、保険証券など重要書類の保管場所を共有してもらいましょう。ネット銀行などはログインIDやパスワードの管理方法を聞いておきます。(IDやパスワード自体は共有してもらう必要ありません。)

Q2. 終活について親へどう切り出せばよいですか?

質問 終活について親へどう切り出せばよいですか?
回答 第三者の話題もしくは親の健康の話題から切り出しましょう。
まず、テレビ番組や知人など、第三者による一般的な話題をきっかけに「うちはどう?」と尋ねてみる方法があります。
あるいは帰省した際に親の様子をよく観察し、「お酒控えてるの?」「こんな薬飲んでたっけ?」と健康を気遣う形で切り出す方法も効果的です。
一度にすべてを聞き出せなくてもよいので、少しずつ深掘りする意識で詰問にならないよう心がけましょう。

Q3. 親にエンディングノートを書いてもらうべきですか?

質問 親にエンディングノートを書いてもらうべきですか?
回答 絶対に必要なものではありません。
終活の目的は親に何かあったときに必要な情報を家族がすぐ確認できる状態になっていることです。
終活専用につくられたエンディングノートは必要な情報を分かりやすく1冊に整理できる点で優れていますが、大学ノートや手帳で代用しても問題ありません。
エンディングノートや大学ノートなど情報をまとめたものを作成した場合は、そのノートの保管場所も家族で共有してくださいね。

親が元気なうちに相続よりも介護のことから確認していこう

親が元気なうちに相続よりも介護のことから確認していこう
親の終活は親から切り出してくれる形が理想です。
しかし親本人にとっては自分の介護や死と向き合っていく作業でもあり、重要だと分かっていても思うように進められない方も少なくないでしょう。
子どもの立場からも、親の介護やお金の話を切り出すことに抵抗を感じるかもしれません。
本記事では、親の終活に関して悩みを抱えるSさんからの相談をもとに、親に聞いておくことや話の切り出し方などについて解説してきました。
要点を簡単に振り返っておきましょう。
Check
子どもから切り出すならテレビや知人の話、健康の話がよいきっかけ
Check
まずは親自身のお金で介護費用を賄えそうか確認しよう
Check
通帳、マイナンバーカードなど重要書類の保管場所も把握しておこう
Check
兄弟姉妹がいる場合は、親から聞いた情報を子どもどうしで共有しよう
親の終活について子どもの側から切り出すポイントは、「ちゃんと考えてよ」という押しつけではなく、親の困りごとや何かあったときのことに耳を傾ける姿勢です。
あれもこれも情報を共有してもらえれば助かりますが、最低限確認しておきたいことはそれほど多くありません。
お盆や年末年始などの家族が集まる機会に少しずつ話を聞き、兄弟姉妹がいる方は情報共有をおこないましょう。

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