親の介護から相続まで〜親が元気なうちに話しておくとよいこと〜【前編】

2023年5月23日
親の介護から相続まで〜親が元気なうちに話しておくとよいこと〜
親にはできるだけ元気で長生きしてほしいものですが、「もしも」のことを考えて、介護や亡くなったあとのことを話し合っておけると安心ですよね。
NTTファイナンスの調査(2021年)によると、76%の親が終活について子どもと話したいと思っているが、実際には22.9%しか話し合いの場を持てていないことが明らかになりました。
とはいえ
「具体的になにを話したら…」
「親にどんな準備をしてもらえば良いかわからない」という状況だと、なかなか一歩を踏み出しにくいでしょう。

前編ではさっそく、親と話しておきたい3つの内容を紹介します。
ひとつずつ、くわしく見ていきましょう。

介護の方針を決めておく

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介護期を過ごす場所や、どんなサポートを受けたいか、介護を受ける本人の希望を聞いておきましょう。具体的には次の3点について確認しておきます。
  • 1. 施設に
    入居するか否か
  • 2. 施設の種類
  • 3. 施設
    入居にかかる費用
本人の意思・希望がわかると、介護施設や利用するサービスの選択など準備がしやすくなります。
チェック1. 施設に入居するか否か
施設への入居を希望する場合は、施設の場所、設備・サービスの充実度など、希望する条件を聞いておきましょう。候補となる施設を事前にいくつか調べれば、必要となる費用がつかめて金銭的な準備も進めやすくなります。
在宅介護の場合は、一般的に施設での介護より費用が抑えられる傾向にありますが、手すりやスロープの設置などリフォームが必要になるかもしれません。ほか施設への送迎など時間的な拘束が生まれる可能性も…。あらかじめ希望を聞いておけば、兄弟姉妹との話し合いや事前の対策をスムーズに進めやすいでしょう。
チェック2. 施設の種類
介護施設といっても幅広く、おもに9種類あります。
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老人ホーム種類一覧|主な9施設の費用や違い、おすすめ診断

それぞれ入居条件や提供するサービスが異なり、認知症の方が入れる施設はおもに次の4種類です。
1. グループホーム
2. サービス付き高齢者向け住宅
3. 有料老人ホーム
4. 特別養護老人ホーム
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このうちグループホームは「認知症対応型共同生活介護」ともいい、認知症の利用者を対象に専門的なケアを提供するサービスです。認知症の入居を受け入れる代表的な施設といえます。
ただし、ここで挙げた施設のすべてが認知症の方を受け入れているわけではありません。症状や医療依存度の高さなどによって受け入れ可否が変わってくるため、注意しましょう。
チェック3. 施設入居にかかる費用
施設の入居にかかる費用は次の2種類です。

● 入居一時金
● 月額利用料


みんなの介護によると、入居一時金の全国平均は94.7万円です。ただし公的・民間の別や地域差などによって、10万円ほどで入居できる施設も多くあります。
月額利用料の相場は下の表をご覧ください。
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参照:【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)

また生命保険文化センターの調査によると、介護期間は平均61.1ヵ月(5年1ヵ月)となっています。月額利用料×介護期間で、介護期間をとおした施設利用料の目安が立てやすくなりますね。たとえば10万円のグループホームを5年間利用するなら、610万円程度は必要になりそうだと考えられます。

葬儀の希望を聞いておく

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お通夜やお葬式、お墓についても希望を聞いておきましょう。とくに葬儀は一般的に亡くなってから1〜3日程度で執りおこなわれ、とにかく時間がありません。また亡くなってからでは本人の意思を確認することも叶いません。具体的には次の4点を聞いておきましょう。
チェック1. 葬儀の種類
チェック2. 招待者の連絡先
チェック3. 遺影用の写真
チェック4. 戒名・お墓の維持
チェック1. 葬儀の種類
コロナ禍の影響もあって最近は家族葬が増えていますが、一般葬と家族葬では招待者数、規模が変わってきます。
くわえてお墓についても意向を聞いておきます。すでにあるお墓をしまう予定の方や、お墓がない方は永代供養をお願いすることになるでしょう。永代供養は遺骨や位牌をお寺に預け、納骨堂や共同墓地にて供養と管理をおこなってもらう方法です。
永代供養の一種に「樹木葬」があります。樹木葬では墓石を設けず、樹木を墓碑とする新しいお墓の形として近年人気を集めています。
(こちらもご参考に:「親の墓をどうする?墓じまいの費用や安い5つの供養先を解説」
チェック2. 招待者の連絡先
葬儀に招待する(招待したい)方、連絡してほしい方の連絡先を、分かるようにしておいてもらいましょう。家族葬は一般的に子どもや、子どもの家族、兄弟姉妹など近しい親族のみで執りおこないますが、友人を呼んではいけない決まりはありません。
招待する人、しない人を明確に定めて、連絡先リストにまとめておいてもらうと助かります。
チェック3. 遺影用の写真
遺影用の写真はスナップ写真だけでなく、スマホやデジカメで撮った写真からでも作成を依頼できます。遺影用の写真を選ぶポイントは次の3つです。

● 比較的あたらしい写真
● 本人らしさが表れる写真
● ボケていない写真

ポイントを押さえていれば、グループ写真でもOKです。故人だけを抽出し、余分な背景は加工してもらえます。遺影用の写真はお通夜までに準備しなければなりませんが、限られた時間で故人らしい素敵な写真をたった1枚選び抜くのは大変な作業です。前もって指定してあると非常にスムーズでしょう。
チェック4. 戒名・お墓の維持
戒名は基本的には僧侶に依頼して授かりますが、実は自分で自分の戒名を決めることもできます。ただし菩提寺がある方は、菩提寺に戒名・葬儀・納骨までお世話になるパターンが一般的です。戒名の希望がある方は、菩提寺へ事前に相談しておくことも大切です。
また親からお墓を引き継ぐなら、お墓や墓地の管理費や、お寺の行事への参加、お寺へのお布施などもあわせて聞いておきましょう。

相続の内容をまとめておいてもらう

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終活と聞いて、まず思い浮かぶのが財産についてではないでしょうか。誰になにを渡すのか、きちんと決めておいてもらいましょう。遺す財産が多くなかったとしても、相続で揉める可能性があります。とくに不動産は分けにくいため、トラブルになりがちです。
また財産には預貯金や株式など「正の財産」だけでなく、ローンや借金などの負債も含まれるため、注意が必要です。
誰になにを渡すか決めたら、遺言書やエンディングノートの形でまとめておいてもらいましょう。
チェック1. 遺言
遺言書には次の3種類があり、どれも法的な効力を持ちます。

● 自筆証書遺言
● 公正証書遺言
● 秘密証書遺言
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自筆証書遺言はもっとも手軽に作成できる一方で、せっかく書いても要件を満たしていなければ無効となるリスクがあります。要件をよく確認したうえで、慎重に書きましょう。
チェック2. エンディングノート
エンディングノートは財産についてだけではなく、これまでにお伝えした介護や葬儀などを含め終活に関することを幅広く書けるノートです。基本的に法的効力はありませんが、要件を満たせば自筆証書遺言として有効になります。
とくに形式は決まっていないため、普通のノートに書いていってもOKです。また専用のノートが書店やWebで簡単に手に入るほか、スマホアプリもリリースされています。
自分に合った形で書き進めてもらい、ノートの保管場所を教えてもらいましょう。エンディングノートを準備していても、存在や保管場所を本人以外が知られなければ意味がありません。見落としがちですが重要なポイントなので忘れずに聞いておきましょう。

親が元気なうちに話しておきたいポイントは「介護、葬儀・お墓、相続」

万が一に備えて、親が元気なうちに聞いておきたい・話しておきたいポイントをお伝えしました。
介護、葬儀・お墓、相続…どれもお金が絡みますし、デリケートな話題でもあるため、簡単には決められないかもしれません。だからこそ「うちの親はまだ元気だから大丈夫」と思っても、少しずつ、できることから取り組んでいきましょう。
後編では相続について掘り下げてお伝えします。

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